- 2020年02月18日
- _リポート
地域の教会でイベント『いのちをつなぐ』
去る2020年2月8日、神戸で開催されたイベント『いのちをつなぐ』に参加しました。主催は、妊娠中から産後、育児で困っている女性までの相談窓口を24時間365日ひらいている一般社団法人「小さないのちのドア」。神戸市ほか新聞社などが後援となっています。
会場は、小さないのちのドアから徒歩15分ほどのひよどり台教会。牧師の大嶋博道氏は小さないのちのドアの理事でもある。『いのちをつなぐ』イベントは、ギターの弾き語りでスタート。続いて映画『まだ見ぬ あなたに』の上映と、小さないのちのドアの1年余りの活動から見えてきたことを代表の永原郁子助産師とスタッフである西尾和子保健師のトークが行われました。今回のイベントは10代から20代の若い世代を対象にして開催。当日は、10名以上の10代を含む、30名弱の方が参加されました。
相談の半数が「思いがけない妊娠」「親にだけは言えない」
小さないのちのドアの母体はマナ助産院。開設から1年4か月で2,234件の相談を受けており、その半数以上が思いがけない妊娠によるものだそうです。映画『まだ見ぬ あなたに』でも表現されていたように、さまざまな選択肢を知らないことで「死ぬしかない」と思い悩む女性は多いといいます。
ここは助産院が併設されていることから、相談を受けた時点で未受診の女性であれば、妊娠検査や検診ができる設備があります。検診後、周産期センターや民間の養子縁組支援団体へつなぐことや、行政、学校、家庭との連絡調整まで、助産師・保健師のスタッフが親身になって相談に乗っています。相談は、直接来所、メール、LINE、電話など、利用する女性たちの目線に立ってひろく門戸をひらいています。
思いがけない妊娠に際し、「親にだけは言えない」と考える女性は多いといいます。そんな時にも「お母さんも最初は驚き、怒ったりもするけど、それは本当に娘のことを思っているからこそ。私たちも入ってお話するうちに変わってくるね」と永原助産師。「今までのケースでは、最終的にはお母さんが応援してくれるようになりましたね」と西尾助産師。当事者だけでなくその家族も含めた細やかなケアが実践されていることが伝わってきました。
「男性の存在についても考えて」
永原助産師と西尾保健師がこれまで出会った女性のお話や、日本と外国の制度の違い、少子化政策による状況改善についてなどが語り合われ、会場の参加者はみな真剣に耳を傾けていました。「性衝動は愛ではないし、孤独解消欲求は、愛ではないのです」と永原助産師はスライドを使って説明。自立に向けて自分を育てる時期に、どんなパートナー像が望ましいかということを4点あげています。「一緒にいると、自分らしくいられる。やる気が出る。すてきな自分になっていく。欠点を補いあえる」
永原助産師は、会場の若者たちに、「あなたたちには、ぜひ発信をしていただけたらと思います。」と呼びかけました。
最後に、小さないのちのドアの理事でもある大嶋博道牧師からのお話では、「映画で描かれなかった男性の存在について考えて欲しい」と触れられ、アンケートには男女ともに多くの感想をいただきました。
以下、アンケートでいただいたご意見からの抜粋です。
- 映画では、女性がひとりで辛い思いをしていた。周りにそのような人が居ればどのような言葉をかけるといいか、解決のアドバイスなどもできるようこの「いのちをつなぐ」を心にとめ生活していきたいです。
命をつなぐことの重要性や、命の重さなど、大切な命を1つでも多く助けることができるように自分も情報を伝えることができればいいなと思いました。(10代・高校生・男性) - 詳しく描かれていてよかった。困ってる人を助けるところがある、実際にあった話もきけてよかった。
(10代・中学生・男性) - 「生命と倫理」という大学の授業で中絶について学んだところだったので、この映画と今日の話とあわせてとても考えさせられた。
(10代・大学生・男性) - これから新しい命とかかわっていく若い人たちにもっとこの活動やお話が伝わる機会が増えることを願います。
(50代・男性) - 「親子」「自分とおなかの子」「おなかの子の今と未来」という視点がよかった。女性側の視点のみの映画だったが、希望と安心を感じるものだった。
(30代・会社員・女性) - こういう人が自分の周りにいたら、と考えられた。私もそういう人を助けられる仕事に就きたいと思った。
(10代・中学生・女性) - 主人公の女の子が最後子どもをかわいいと思えてよかった。潤子さんが良い人だなと思いました。日本にも困っている人がいっぱいいるのを知ってびっくりした。
(10代・高校生・女性) - 10代の子が妊娠して、それでも命をつないでくれるところがあるってもっと他の人にも知ってほしい。もっとたくさんの人に話を聞いてほしい。
(10代・学生・女性)
終了後、教会のホールから階下のサロンに場所を移して、お茶とお菓子を囲んで10代20代の方々の感想を直接聞くことができました。一人一人が、自分の言葉で順番に語ってくれたことに、筆者だけでなく普段彼らと接している教会の方々も驚いていました。映画という、情感に訴える形式で伝えられたこと、支援現場の生の声を聞けたことが大きかったのではと思います。このように若い世代とともに考える機会、発言の機会を作っていくことが、これからの未来を変えていくのに有効だと感じました。
イベント『いのちをつなぐ』は、同会場、同内容で3月15日一般向けに再度開催されます。どの年齢層の方でも大歓迎だそうです。
一般社団法人小さないのちのドア
https://door.or.jp/info