児童相談所のリアルな姿を描く短編映画小澤雅人監督『ほどけそうな、息』東京・ポレポレ東中野にて9月3日(土)より公開

©『ほどけそうな、息』製作委員会
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小澤雅人監督作品『ほどけそうな、息』がいよいよ公開となります!当サイト『Enlight』の運営母体である『Foster Care Promotion Project』がプロデュースした『まだ見ぬあなたに』に続く、児童福祉をテーマにした短編映画の第2弾です。

 

主演はNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で主人公の幼なじみ「きぬちゃん」を演じた小野花梨さん。新卒で児童相談所に入所して2年目のカスミを演じています。カスミは一時保護をされた9歳の少女ヒナのケースを受け持ちます。ヒナの母親であるシノブはお酒の問題を抱えていて、虐待の疑いもあります。その母親を元宝塚の月船さららさんが演じています。

なぜ児童相談所の仕事は知られていないのか

©『ほどけそうな、息』製作委員会

児童相談所は、すべての子どもが心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していくための「ソーシャル・ケースワーク」を行う専門の機関です。児童福祉司はその職務を果たすべく、日々懸命に働いています。

児童相談所は児童虐待事件のニュースが流れるたびに、非難の矢面に立たされていますが、実際にどんな仕事をしているのかあまり知られていません。家族のプライバシーに関わる仕事であることから、一般の人が知る機会は限られているのです。

この映画は児童相談所で働く多くの職員が協力して実話を元に構成されています。一つのケースワークが物語の中心になっています。児童福祉司のカスミと母親のシノブが対峙する緊張感のある場面のなかで、リアリティをもって描かれています。

©『ほどけそうな、息』製作委員会

完成披露上映会で監督と出演者がトーク

映画公開に先駆けて開催された完成披露上映会では、小野花梨さん、月船さららさん、小澤雅人監督による公開記念のトークが行われました。

主役の小野さんは、この役を演じるにあたり、児童相談所・児童福祉に関する多くの資料を読み込んで、役を作っていかれたそうです。

虐待事件が発覚するとニュースでは『児相は動いていたのか』という声が聞こえてきますが、こうして児童相談所の職員の役をやらせていただき、もどかしさを感じました。児童福祉司は多くの人の気持ちを汲みとりながら矢面に立ち、お子さんはもちろん、お母さんやお父さんにも助け船を出す。こんなにも愛のある職業であることがなぜ理解されないのかと」(小野さん)

月船さららさんは、母親の側を演じ、ニュースでは加害者となってしまう側も決してただ責められるべき存在ではない、理解と助けが必要であると実感したそうです。

「演じながらわかっていく心情というものがあるんですよね。彼女なりにがんばっているけれどできない部分がある。一方的な加害者にしないということは監督とも話しながら作り上げていきました。素晴らしいテーマの作品に出会えました。この映画こそ、今たくさんの人に見てもらうべきだと思っています」(月船さん)

©『ほどけそうな、息』製作委員会

小澤監督からは「小野さんの存在感、月船さんのエネルギーが対峙するシーンは、撮る前からすごいシーンになると思っていましたが、やはり圧倒されました」とのコメントがありました。

「児童相談所をテーマにした映画を撮りたいと常々思っていたところにこの企画が立ち上がり、多くの児童福祉司の方にご協力いただき完成しました。児童相談所でのエピソードは個人情報保護のために開示はできませんが、この映画が児童相談所のこと、そこで働く児童福祉司のことを知る機会になればと思います」(小澤監督)

“息づかい”が伝える緊迫感、不安、そして成長

©『ほどけそうな、息』製作委員会

映画のタイトルである「ほどけそうな、息」にはどんな思いが込められているのでしょうか。

映画は赤ちゃんを保護するという緊迫感のあるシーンから始まります。カスミの緊張感が、乱れる呼吸から伝わってきて、観客も冒頭から息をのみます。バラバラにほどけそうな家族。登場人物の人生の歩みもバラバラにほどけてしまいそうな展開のなかで、子どもへの思いを軸に、支援する側とされる側の関係を超えて、二人の距離はたぐりよせられていきます。

©『ほどけそうな、息』製作委員会

息をつなぐことは、生きることをつなぐこと。ほどけそうな、家族や親子の“生きる”をつなぐ。そんな仕事をしたいという決意が、ラストの呼吸から伝わってきました。

〈ストーリー〉
新卒で児童相談所に入所して2年目のカスミ(小野花梨)が、赤ちゃんを母親の元から引き離して一時保護したり、親たちに理不尽に怒鳴られたりしていたが、疑問を感じながらも、上司や同僚のサポートのおかげでなんとか踏ん張っていた。そんなある日、一時保護された9歳の少女ヒナ(佐藤璃音)のケースを受け持つ。仕事で留守にしがちな父トオル(古山憲太郎)と、お酒の問題を抱えている母シノブ(月船さらら)はネグレクトが疑われたが、二人とも反省している様子。しかし、つい感情的になったカスミが、シノブの信頼を失うような事件を引き起こす。果たしてカスミは再びシノブの信頼を得られるのか、そしてヒナは両親のもとに帰ることができるのか……。

〈上映スケジュール〉
『ほどけそうな、息』小澤雅人監督 短編作品同時上映
公式HP:https://hodokesouna-iki.jp
上映:ポレポレ東中野 https://pole2.co.jp/

9.3(土)〜9.9(金) 20時30分~
『ほどけそうな、息』+『まだ見ぬ あなたに』

9.10(土)〜9.16(金)  18時40分~
『ほどけそうな、息』+『一瞬の楽園』
上映期間中、監督・出演者・ゲストによる舞台挨拶・アフタートークも開催予定!
料金:一般1500円/大学・専門・シニア1200円
チケット:劇場WEB・劇場窓口ともにご鑑賞日の前日より発売
※定員入替制・全席指定席

〈アフタートークイベント情報〉
https://pole2.co.jp/news/7b68bb1b-3b4c-437f-8fc3-25bbe6d0c23e

 

文・林口ユキ