【後編】トークセッション『“かぞく”をつなぐ、“ムラ”を育てる』第1回エンライト・ミーティングセッション02

Photo by Miki Hasegawa
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エンライトミーティングのセッション02のリポート後編です。養子縁組家庭は学校や地域にどう説明をしているか、里親家庭で実子と里子の関係、子どもが権利の主体であることとは? 白熱したトークセッションとなりました。(前編はこちら)

学校の先生に理解を得る方法

高橋ライチさん:学校との関わり方についてはいかがですか? 鈴木さんは嫌な思いをしたご経験はないそうですが、嫌な思いをしたら相手との関係を閉じてしまう、あるいは不満を持ちながらも変えられない、という人もいると思います。

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鈴木さん:養親や里親の子育てサロンでの会話で、「私は養親であることを学校の先生には言わない」という方もいました。なぜなら、養子縁組や里親家庭に偏見を持っているかもしれないからと。実際に嫌な体験をした人もいます。クラスで問題が起きたとき、犯人だと疑われたことがあったそうです。でも私は「きちんと先生と話したのかな?」と疑問に思いました。

我が家は養子縁組であることを保育園でも小学校でも必ず伝えていました。担任以外の先生も全員ご存じというくらいオープンにしています。小学校2年生に生い立ちの授業、4年生になると二分の一成人式をされるところも多い。その際も「お子さんの事情に配慮した進め方にします」と言っていただきました。

もし、伝えていないと、子どもが傷つくこともあり得ますし、先生から見て不可解な反応をすることもあるでしょう。先生ともオープンに向き合ってコミュニケーションをとることで、解決できることはたくさんある気がします。

例えば、担任の先生はあまり理解してくれないと感じても、同じ学年の別の先生、もしかしたら校長先生がすごく味方になってくださるかもしれません。お一人の先生の反応が悪かったから他の先生もだめだろう、ということではなく、味方を見つける。それで課題を乗り越えるということを、親としても学びました。

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齋藤さん:里子の三女は私たちと苗字は異なります。虐待を受けて保護された場合、子どもの安全のために名前を変えることもありますが、うちの場合は当てはまらなかったからです。彼女の苗字はとても素敵だし、もし名前が違うことで困ることがあったら、そこを解決していくのが自分の仕事だと思っていました。

うちの仲間になってからずっと、彼女だけ苗字は違いますが、不便なことは何もありません。時たま娘の苗字で私が呼ばれることもありますが、「はーい!」と答えていますしね。

今では、娘は自分の名前をとても気に入っていて、誇りを持っているようです、ある時、「もう、齋藤の苗字になっちゃう?」と軽い気持ちで聞いたら、とても丁寧に断られました(笑)。「なおさん、お気持ちは嬉しいけれど、自分は自分のままでいたい」と。

それを聞いて、とても素敵だなと思いました。

小学校2年生で「振り返りの授業」というプログラムがありました。自分の生い立ちを振り返るという趣旨のものです。里親子にとっては難題で、過去が分からなかったり、振り返る事自体が危険(虐待のトラウマ)なこともあります。子どもによって様々な環境があるので、事前に相談することがとても重要なのです。

この時の担任の先生とも丁寧にお話ししました。先生からは「2年生全体に里親の授業をしませんか?」とご提案いただきました。3年生の時にクラス替えがあり、今まで2年間かけて理解を深めたクラスメートとも、先生とも離れてしまう。そうすると、うちの子が嫌な思いをしないか心配だという理由からでした。うちの子のことを心から考えてくれる、本当に素敵な先生でした。

里親の授業では、私が里親であること、社会的養護のこと、みんなの同級生である娘は「3歳で自分で決めてうちに来てくれたんだよ」など、2年生でも分かりやすいようにお話ししました。最後までしっかり聞いてくれて、質問タイムでは全員が手をあげてくれました。

多くは社会的養護の仕組みについての質問が多かったですが、かなり踏み込んだ質問もありました。答えられないもの、答えたくないものについては、事前に娘とどう答えるか相談していました。

私がみんなの前で「答えてもいいという質問には答えるけど、そこは答える必要はないと思ったら、答えないよ」という自分の情報を自分で管理することも示すことができました。

質問が一通り済むと、「うちはお母さんしかいないよ」「うちはお父さんが違うんだよ」など、子どもたちからのカミングアウト大会になりました。「私もママしかいなかったのよ。離婚してたから。そんなのもあるよね。」と認め合う時間になりました。学年の中でも多様な家族があることが分かって、それをどう理解したらよいのか、ということを伝えるためにも良い授業になりました。「家族はいろいろな形があっていい。ただし、あなたが嫌なことをされるのは、家族であっても血がつながっていても、それはだめなことだから大人に伝えて」と話しました。

学校の先生方とは、こうして良い関係を築いてきましたし、町内会の皆さんや中野区の行政の方もみんなで支えてくれていることを実感しています。

実子と里子、お互い嫉妬することは?

事前に配った質問用紙。多くの方が質問を書いてくださいました。  Photo by Miki Hasegawa

ライチさん:会場からのご質問です。実子もいらして里子を迎えるにあたり、お互いが嫉妬することはありますか?

齋藤さん:もちろん、あります。実子が里子に嫉妬することもありますし、その逆もありますよ。それは、一般的な姉妹間でもありますよね。

私は、基本的に上の子を優先させています。というのは、私は二番目で生まれましたが、長女のような役割の時期もあって、どちらの気持ちも経験しています。

私が小さい頃は時代的にもそうだったと思うのですが、一番上の子ってがんばっても認めてもらいにくいですよね。親も初めての子育てで、やや下手だし、やたら頼っちゃうし。

「お姉さんなんだから我慢しなさい!」とか、我慢した分よいところがあればいいけれど、美味しいケーキを選ぶ時なんかは小さい子が優先されたりしてね。納得いかなかったんですよ。責任を持たせるなら、権限ももたせてくれ!と(笑)。

という気持ちから、基本的に一番可愛がるのは長女です。独裁政権時代を経験している長女にとっては、独り占めってとても大切。

それに比べて、次女という立場は、自分の経験からですが、生まれながらにして半分こは当たり前なので、長女ほどショックではないかなと思うんです。可愛がってくれる人が一人(姉や兄)多いわけですから、そこは心配しないでも大丈夫なのではないかなと思います。

とにかく長女をしっかり可愛がることで満たされて、次女のことを可愛がりたくなるという流れが必要だと思います。私はそれを、水田方式と呼んでいます(笑)。

その方式で可愛がった結果、長女は何かあると「お母さん、デートしよう。」といって個別の時間を持ち、人生の色々なことを相談してくれます。次女は「世界で一番好きな人は、お姉ちゃん!」という程、お姉ちゃんが大好き。

そして、三女は厳しくも甘やかすお姉さん二人に守られて、のんびり育っています。面倒見てもらうのが当たり前と感じているようです。そして、家族の中で一番好きなのは、次女なのです。可愛いですね。

子ども同士、当初は遠慮することもありましたが、「この子はかわいそうだから、いろんなことを優先してあげて」という特別扱いはしませんでした。1人の大切な人だからこそ、平等に良い悪いは伝えることをしていました。

親側の気持ちとして気を付けたのが「実子と同じように」ということに振り回されないことです。始めのうちは「同じ」ということに拘っていて、いちいち自分の行動を点検して、あれは差別してたんじゃないか、とか考えていました。実子と同じようにすることが、大切にしていることと勘違いしていたからです。

でも子どものニーズに合っていなかったんですよね。同じようにやったら、とても負担をかけているんだということが分かりました。よく考えたら、姉弟でも育て方が違うということと同じかもしれません。その子にあったニーズに応える事、伝え方、関わり方を模索することが一番大切なんだと気付きました。

これから里親になろうと考えている方は、誰かと比べたりしないで良いと思います。目の前の子どもが喜ぶことは何かな?と、よーく見てみたら、答えはそこにあると思います。

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ライチさん:地域との関わり方はいかがですか?

鈴木さん:これまで子どもがいなかった家に2歳7カ月の子がいたら、ご近所の方は「おや?」と思いますよね。ですから、「養子縁組で迎えました。うちの子になりますのでよろしくお願いします」とご挨拶に回りました。

その後、ご近所の方には本当に支えられました。毎朝登校のときに声をかかえてくれる方、「うちの息子が昔着ていた法被。これを着てお祭りに行きなさい」と持ってきてくださる方。すぐにチョロチョロとどこかに行ってしまう子だったので、ご近所の特におばあちゃんおじいちゃんの目があるのはとてもありがたかったです。

子育て、男性はどうコミットするか

(会場よりご質問)みなさんの活動の中に「男性」はどのようにコミットすればいいのか、教えていただけますか?

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落合さん:私は子育てサロンと、地域のネットワークと、子育てメッセなどの活動をしていますが、地域のネットワークの方は、江東区という地域がら男性に協力してもらう方がうまくいきます。町内会や地元の名士の方との人脈を作ることも運営していくうえでとても大切です。

子育てメッセの2年目、実行委員長には、企画や戦略的なところを専門にしている男性に担ってもらいました。初めから地域の子育て支援に関心はなくても、運営にかかわっていただくうちにスキルを活かして少しずつコミットしてくれるようになる。それが狙いでもあります。

ただ、子育てに関する活動は、多くの男性からは「自分の役目ではない」と思われる傾向はあります。理解してくれている人は、協力してくれますが、やはり女性の子育て当事者が多いですね。

鈴木さん:夫は主体的に子育てをしてくれます。そもそも、乳児院からご紹介があって、初めて会ったとき夫が息子に一目ぼれしたのです。長らく相思相愛でしたが、息子の方が思春期に入って、以前ほど自分とハグしてくれなくなったと寂しがっています。

私たち夫婦は再度の里親登録をして2年になります。先日、短期で初めて赤ちゃんをお預かりしました。息子も話を聞いたときは「ふ~ん」という感じでしたが、いざ赤ちゃんが来ると、息子と夫と二人してすごくかわいがっていましたね。赤ちゃんの存在はすごいですね。

男性が子育てにコミットできないときの理由の一つに、「赤ちゃんのことがよく分からない」というのはありそうです。知らないから戸惑う。夫も最初はそうでした。だから、「こういうときは、こんな風にすれば笑うよ」「○○って声をかければいいよ」と、具体的に伝えてあげる。それをやってみて、成功すると楽しくなるし、成功体験が積み重なるとモチベーションが上がる。男性はそういう方法論がいいのではないでしょうか。

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ライチさん:子育てのことだけで呼びかけないで、例えば「アフリカ×子育て」とか「餅つき×子育て」とか、きっかけとなる何かとかけ合わせるといいかもしれないですね。

それでは最後に一言ずつメッセージをお願いします。

子どもが権利の主体であること

Enlight(エンライト)が作成した、特別養子縁組についてなどのお勧め本を紹介している「えんBOOKS」  Photo by Miki Hasegawa

鈴木さん:私が接したアフリカ社会は、近所の子どもは自分の子とか他人の子とかあまり関係なく「みんな社会の宝」という考え方でした。もちろん、貧困などの理由で置き去りにされる子どももいます。そういった子も含めてみんなで育てていこうとするアフリカ社会から学ぶこと多いと感じます。今日のみなさんのお話を聞いて、私も住んでいる地域で、何か小さいムラを作る活動を始めたいなと思いました。

里親として赤ちゃんをお預かりした話をしましたが、体力的なことを考えるといつまで小さいお子さんをお引き受けできるのか心配です。若い方にはどんどん里親登録、養子縁組登録をしてくださるのをお待ちしています。

齋藤さん:一般家庭にしろ、里親や養子縁組家庭にしろ、子どもの権利に基づいた子育てをしていくことが大切だと思います。児童福祉法が改正され「子どもは権利の主体である」と明確になったことは、素晴らしい進歩だと思います。

「子どもの権利ってどういうこと?」と難しく考えることもなくて、まずは小さい頃に習った「自分がされてイヤな事は、しない」という事と同じことではないかなと思います。子どもが大切にされる社会は、だれにとっても住みやすい環境になると思うんです。

そしてやはり、新しく里親になっていただく方、増えて欲しいです。いまは、里親そのものはもちろん、里親を支えてくださる方も必要です。

今日はいろいろな才能をお持ちの方、いろいろな関わり方ができる方がたくさんいらしていただいています。ぜひご自分のスタイルに合ったやり方でいいので、少しでも社会的養護のことに目を向けてください。そうすることで、地域全体の子どもがすごくハッピーに育つと思います。「これだったらできるかもしれない」ということをぜひ一歩踏み出していただければうれしいです。

落合さん:私はスウェーデンとアメリカのポートランドの子育てを学び、それをモデルにして体罰禁止法制化についても活動をしています。

体罰禁止の法制化は、「その法律や条例を作ることで、どれだけ親の抑止力になるのか」という部分を議論されることが多いのですが、本来は「子どもの権利」なのです。「子どもは注意されたり、教えられたりするとき、叩かれたり、怒鳴られたりしたいと思いますか?」ということです。権利を念頭に置いた条例、法制化が重要だと私は捉えています。

子どもの権利について浸透することによって、保護者も、学校や幼稚園の先生も変わっていくし、教育のシステム自体が変わっていく。私はそれを待ち望んでいるのですが、残念ながら日本では子どもの権利の理解がまだ浅い。

今年は子どもの権利条約が制定されて30年のメモリアルイヤーです。子どもは社会の宝であり、未来を創っていく礎です。子どもの権利が浸透することで、いろいろなところが変わっていくことを心から願っています。

ライチさん:今日は会場の皆さんからたくさんご質問をいただき、ありがとうございます。ご登壇者の方もありがとうございました。(了)

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Enlight編集部がセレクトしたbookコーナーも設置しました。  
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前編はこちら)

構成・文/林口ユキ  写真/長谷川美祈 久光菜津美